アクセルワイヤー&オイル用ワイヤー周り点検

ここでは、通常点検の中でも簡単に行えて、且つ走行性能に重要な影響を与えるワイヤー周りの点検方法について書いていきます。個人の知識レベルで書いていますから、間違ったこと書くかも知れません。この内容を読んで実施される方は、個人の責任範囲で 行ってくださいね。正確な情報を知りたい方は、サービスマニュアルを入手されることをお勧めします。

整備書は必ずご用意して熟読しておいて下さい

この通りに作業して、何かトラブルがあった場合でも、作成者は一切の責任を負いません。悪しからず(;^_^Aアセアセ

1.特徴は?
SDRはYPVS連動の分離給油方式になっています。
オイルポンプ動作用のワイヤーは、それぞれスロットルワイヤーとYPVS用サーボ モーターからのワイヤーに連結されているため、ちょっと複雑な動きをします。
下の写真では、赤丸で囲まれた部分がそのワイヤー分岐部分です。



で・・・各部の関係を画に書くとこんな感じになっています。
スロットルワイヤーが直接オイルポンプを引っ張っている訳では無く、
サーボモーターとバランスしながら動さしている事が判ります。
上図のように、スロットルワイヤーと各部の動作が連動していますから、ワイヤー調整が悪いとキャブレター動作だけでなく エンジンオイル供給量にも影響を与えることになります。
スロットルワイヤーの調整では順番に各部を調整していくことで、適正な遊び量が確保されてスムーズな動作を確保できます。

2.どんな風に動作しているか?
調整の説明に入る前に、簡単にワイヤー動作の説明を書いておきます。
下の図はスロットル操作時におけるワイヤーの動きです。
急にスロットルを開けても、エンジン回転の上昇に合わせてYPVSが動作するタイミングでしかオイルを増量していません。
オイルの無駄な消費を避ける事が出来ると言う事は、オイル量の過大によるカブリを防ぐことも可能とも言い直せます。


次の図は、急にスロットルを閉じた時のワイヤー動作です。
『スロットル全開=エンジン負荷大』の時は、ピストンリング付近の極圧が高くなりますから、オイル量は多めにしないと金属同士 の接触による焼き付きの可能性が出てきます。
『スロットル全開→急に全閉』のような操作をした場合、スロットルワイヤー直結タイプのオイルポンプでは、供給量が少なくなり過ぎます。
SDRや、当時のヤマハ車に採用されていたYPVS連動方式の分離給油では、エンジン回転数に合わせて閉じるYPVSの動きに オイルの供給量を制御させていますから、粗いスロットル操作に対しても比較的適正なオイル供給を行うことが可能です。


3.キャブレター全開調整
3-1.キャブレター側調整
確認はキャブレター脇にある点検窓を使って行います。
スロットルを全開にした時に、中に入っているピストンバルブの○マークの中心が一致していればOKです。
ずれている場合は、右図に記載しているキャブレターのワイヤー調整用ロックナット を緩めて調整します。
ロックナットを緩めたらアジャスタを廻すとピストンバルブの位置調整が出来ます。
(調整後はロックする事を忘れずに!!)

3-2.スロットルグリップ側の調整
キャブレター側のスロットルケーブル調整が終わったら、今度はスロットルグリップ側 の確認(調整)です。
動き始めの所に、回転方向で3〜5mmの遊び量(ガタ)が出るように調整します。
この時の遊び量測定位置は、タイコとグリップのツバ外周あたりで測定して下さい。
この遊び量は、ハンドルを左右に切った際に、エンジン回転が暴れないようにする為、 必要なガタでもあります。大きすぎればレスポンス悪いですし、少なくすると危ないです(;^_^Aアセアセ

一連の調整が終わったら、もう一度キャブレター側の全開確認窓で点検した後、エンジンを掛けて ハンドルを左右に切ってみます。
エンジン回転に異常が無ければ、アクセルワイヤーの調整は終了です。
最後にもう一度、各部のロックナットにゆるみが無いことを確認します。

ここまでの調整で、スロットルワイヤー側の基準位置が定まりました。
ここまでの確認が出来ていない状態でオイルポンプ側ワイヤーを先に調整してしまうと、キャブ側の調整次第では、 ポンプからのオイル吐出量が変わってしまう場合がありますから、注意してください。

4.オイルポンプ合マークの確認
4-1.カバーの取り外し〜YPVS全開
SDRでは、右写真の赤丸で囲まれた部分にオイルポンプが入っています。
上下2本のネジで固定されていますから、それを外してオイルポンプが 見えるようにします。
次にYPVSモーターを全開にします。
バッテリーレスで無ければ、メインスイッチONで全開になる筈です。

4-2.合マークの位置合わせ
カバーを開けた状態で、スロットルグリップを廻して、アクセルを全開にするとポンプについているプーリーが回転します。
アクセル全開状態で、ガイドピンと合マーク位置が合うようにあわせます。調整は、写真内に図示されているロックナットを緩めて、アジャスタで合わせます。
調整後は、必ずロックナットを締めて下さい。
もう一度アクセルを全開にして合わせ位置が変わらないことを確認し、ずれてしまった場合は、再度調整し直します。
※バッテリーレスの場合
バッテリーレスの場合は、エンジン停止時のYPVS状態が保持されていますから アイドリング状態で停止した場合は、YPVSは全閉です。
メインスイッチをONにしても、サーボモーターが動かない為、オイルポンプ位置調整は マニュアル通りにはなりません。調整する時は、YPVSバルブカバーを開けて、バルブ の位置確認をしながら行うと正確に作業出来るでしょう。
ちなみにYPVS全閉時⇔全開時では合マークの位置で見た時に、3mm程ズレます。 右の写真は、意図的にYPVSバルブ停止位置を全閉状態にし、アクセルのみ全開で位置 確認を行った写真です。少しだけ、合マークの位置がずれているのが判るかと思います。

5.オイルポンプ最小ストロークの点検
最小ストロークの調整が悪いと、オイル供給量の過不足があり得ます。 調整の際は、スロットルグリップ(アクセル)は全閉状態で構いません。 その状態で、キッククランクを静かに動作させると、写真のアジャストプレート が、僅かに上下しプーリーとアジャストプレート間に隙間が出来ます。 そこの隙間をシックネスゲージ等で数回測定し、0.15〜0.20mmであること を確認します。
隙間が足りない時は、ロックナットを外して、調整用シムを交換して合せます。 御決まりですが、調整後は必ずロックナットの締まりを確認し、再度シックネス ゲージで隙間を再確認することを忘れずに!!


測定はこんな感じで!!

※0.20mmより隙間を大きくするとアクセル閉状態でもオイル供給量が増えます。  もちろん、隙間拡大は全域でオイル供給量が多くなります。

※0.15mmより隙間を小さくするとアクセル閉状態でもオイル供給量が減ります。 チャンバーからのオイル飛散は少なくなりますが、焼き付きするかも・・・ 実施は自己責任で( ̄□ ̄;・・・
以上で、アクセルワイヤー周りの点検調整は終りです。

ご注意
冒頭に書いた内容をもう一度書き込んでおきます。
一応、サービスマニュアルを参考にしてありますが、あちこちに個人の主観が入っていますので、 この内容を読んで実行される方は、あくまで自己責任でお願いしますね。
この通りに作業して、何かトラブルがあった場合でも、作成者は一切の責任を負いません。悪しからず(;^_^Aアセアセ